外国人スタッフのマネジメントを成功させるポイントや注意点を解説

外国人スタッフのマネジメントを成功させるポイントや注意点を解説

人材不足の課題を解消したり、優秀な人材を確保したりするために外国人スタッフの採用を進める企業が増えてきました。しかし、文化や価値観の違いから、現場では離職をはじめとするさまざまな問題が起こることも少なくありません。ここでは、外国人スタッフをうまくマネジメントするうえで参考になるポイントや注意点などを解説します。

1.外国人スタッフの雇用においてなぜ異文化マネジメントが重要なのか?

国内の少子高齢化を背景に、外国人労働者の数が増えていることはよく知られています。厚生労働省の外国人雇用状況に関する資料によると、2017年10月時点の外国人労働者数は約128万人で、届出義務化以来、過去最高を記録しました。さらに、IT技術の発達の影響もあり、日本企業はグローバル環境への適応をますます求められていくでしょう。今後、外国人スタッフを積極的に採用し、職場へ定着させることは企業の将来性を大きく伸ばします。だからこそ、文化や価値観の違いで起こる課題を解決する「異文化マネジメント」が重要視されるのです。

2.外国人スタッフのマネジメントにおいてよくある課題点とは

異文化マネジメントを機能させるためには、職場で起きている課題をしっかり認識することが大切です。ここでは、外国人スタッフをマネジメントする過程でよく起こる問題について紹介します。

2-1.言語の壁によってコミュニケーション不足や齟齬が起きている

外国人スタッフのマネジメントで最も目立つ課題は言葉の壁です。社員同士がうまくコミュニケーションがとれないと、誤解が生まれたり不満が溜まったりして定着が難しくなります。もともと英語などの外国語が共通言語になっていない職場では、まずは一定程度以上の日本語が話せる外国人を採用したほうが良いでしょう。そうすることで、その後日本語に不慣れな外国人スタッフが入社しても、最初に採用した外国人が橋渡しの役割を果たしてくれます。また、企業として学費の一部を負担するなど日本語の習得をサポートすることも大切です。日本での生活に慣れてもらうためには、日本語の習得は欠かせないからです。

2-2.文化的な価値観の違いが理解できていない

仕事とプライベートのバランスや上下関係、宗教に対する考え方など、文化的な価値観の違いからトラブルが発生するケースもよく見られます。たとえば「どうしてこの仕事をしないといけないのですか?」と質問する外国人スタッフと、それに対してムッとする日本人社員という構図です。世界には仕事について理由や根拠を明確に説明するのは当たり前という文化もあります。日本人感覚で「空気を読む」ことを期待していては、信頼関係を構築するのが難しい場合もあるでしょう。外国人スタッフとのコミュニケーションでは、彼らが背景に持つ文化的価値観への理解が大切です。

2-3.キャリアに関する考え方が理解できていない

将来のキャリアに対する考え方の違いから、多くの離職者を出しているという事例も存在します。そもそも外国人スタッフには「下積み」という感覚がないことも多いのです。採用は完全に職種別で、専門職としてのキャリアを歩むのが一般的という文化で育っている場合は特にそうでしょう。そのため、本人の希望を無視した配属をしたり、不明確な評価をしたりすると、高い転職率に悩まされる可能性があります。また、日本の「報告・連絡・相談」という文化を過干渉に感じ、一人前として扱われていない、信用されていないといった不満を抱えるケースも多いです。

2-4.外国人スタッフが直面する課題を認識できていない

これまで紹介した例はマネジメントに直接結びつく課題であるために、比較的認識されやすいと言えます。しかし、日本で働く外国人スタッフがどんな不安を抱えているかといった点も把握することが重要です。場合によっては、うまく信頼関係が築けない要因となっているかもしれません。

2-4-1.職場になじめないことによる疎外感

言語の壁が大きく、コミュニケーションが不足していたり、文化的な価値観によって誤解が生まれたりした結果、だんだんと外国人スタッフが孤立してしまうことがあります。たとえば、協調性がない、ルールを守らないなどの評価をして相手に対する理解を止めてしまい、距離を置くのが典型的です。また、職場自体に外国人スタッフを受け入れる雰囲気がないと、疎外感から離職してしまう可能性も高まるでしょう。

3.外国人スタッフのマネジメントを成功させる5つのポイント

会社の将来を考えて外国人スタッフを受け入れても、離職やトラブルが続くことで途方に暮れてしまうことがあるかもしれません。そこで、外国人スタッフのマネジメントを成功させるために役立つ5つのポイントについて解説します。

3-1.ホフステードの6Dモデルを活用する

ホフステードの6Dモデルとは、オランダの比較文化学者ホフステードが作成した異文化マネジメント用のツールです。権力格差の大小や集団主義と個人主義のどちらか色濃いかなど、6つの指標で国別の文化的価値観を測ることができます。相手の文化圏との差が客観的にわかるので、相互理解に効果的です。ちなみに、日本は世界のどの国とも似ていないという結果もあるので、日本人の感覚は独特であると自覚しておいたほうが良いかもしれません。

3-2.担当者のマネジメント能力の向上を図る

外国人スタッフをうまくマネジメントしていくには、言語や異文化理解と併せてマネジメント能力の向上も重要となります。具体的には、部下の能力を引き出すコーチング力やプロジェクトを成功させるための意思決定能力、それらの前提となるコミュニケーションスキルなどです。マネジメント能力は外国人スタッフに対してだけでなく、日本人社員に対しても必要なので、自主的に社外セミナーを受講したり、書籍で学んだりしておけば、さまざまな場面で役に立ちます。

3-3.会社内でのルールを決めておく

外国人スタッフを迎えるときは事前にいくつかルールを決めておくと、トラブルを防ぐことができます。たとえば、仕事中の共通言語や休憩時間の取り方、残業の扱いや名前の呼び方などが挙げられるでしょう。決めたルールはマニュアル化して、可能であれば複数の言語で作成します。実際の運用で不都合が起きるようなことがあれば、相談しながら柔軟に変更していく姿勢も大切です。

3-4.メンター制度を導入する

職場におけるメンターとは、対象者の支援を目的として仕事の指導や助言をする人のことです。外国人スタッフを対象とする場合、外国語ができて、外国人の対応に慣れている人材が望ましいでしょう。対象者の母語で対応することは相手の精神的負担の軽減にもつながります。メンターは外国人スタッフの不安や疑問に対して助言を行い、職場での孤立を防ぐことが役割です。うまく機能すれば、職場への定着率を高めることができます。

3-5.多様性を受け入れる社内文化を醸成する

外国人スタッフはさまざまな異なる背景を持って入社してきます。当然、最初のうちはお互いに戸惑う場面も多いでしょう。そもそも外国人スタッフの受け入れについて、社内に賛否両論があることも考えられます。そのような状況でうまく仕事をしていくためには、メンター以外で積極的に外国人スタッフとかかわろうとする日本人社員の存在が重要です。彼らの貢献度を評価する制度を取り入れて、前向きな雰囲気を広げていくのもひとつの方法として有効とされています。

4.外国人スタッフをマネジメントするうえでの3つの注意点

外国人スタッフをマネジメントするときは、日本人同士で仕事をするときとは別の感覚が求められます。しかし、文化的なギャップが大きいと、気を使うことばかりで悩んでしまうケースもあるようです。そこで、職場で特に意識するべき3つのポイントについて紹介します。

4-1.日本の価値観の押し付けは控える

日本人が国内で就職する場合でも、新しい職場に慣れるまでは苦労するのが一般的です。それが外国人スタッフであれば、環境や文化の違いが大きいぶん、なおさら大変な面もあるでしょう。そのため、彼らから業務上の意見や質問を受けたときは、よく話を聞く姿勢が大切です。「日本ではこういうものだから」といった価値観の押し付けは避けるように意識しましょう。また、外国人スタッフの生まれ育った国の文化を理解することも大きなプラスの効果があります。同じ人間として、お互いの個性や価値観を尊重し合いながら働くのがベストな方法ではないでしょうか。

4-2.曖昧な仕事内容の指示はしない

外国人スタッフに対して「なるべく早めにやって」といった曖昧な指示は避けたほうが賢明です。日本人同士であれば空気を読んだり、相手の状況を察したりしますが、外国人スタッフは仕事の指示に明確さを求めます。何をいつまでにしなければならないか、結果として求められる成果は何かを伝える意識が重要です。また、外国人スタッフから意見や提案を受けて、実現は難しいと思ったときも、はっきり「できない」と伝え、理由も説明しましょう。こうすることで、誤解が生まれるのを回避できます。

4-3.不透明な評価基準にしない

キャリアアップや自己成長を求める外国人スタッフは評価基準が不透明であったり、評価に納得できなかったりすると自分の考えを主張する傾向にあります。このとき、明確な理由を説明できなければ、モチベーションの低下や離職を招いてしまうかもしれません。外国人スタッフへの評価は根拠を明確にして、具体的にどうすればより高い評価を得られるかなど、アドバイスも加えるのが効果的です。

5.まとめ

外国人スタッフのマネジメントには相手との信頼関係の構築が欠かせません。そのためには、日本のやり方や考え方に慣れてもらうことだけを考えるのではなく、相手の国の文化や価値観を尊重することが大切です。また、企業として人材教育担当者のスキルを向上させることもプラスの影響を与えるでしょう。ホスピタリティ&グローイング・ジャパンでは日本人のマネージャー向けに「外国人スタッフ戦力化研修(講師派遣型研修・短期集中研修)」を開催しています。外国人スタッフをマネジメントするための基礎知識やティーチングの秘訣を学ぶことができます。ロールプレイングによるティーチングの実践もありますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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武内 亮子

投稿者プロフィール

人材育成において数百名規模を管理。グループの副責任者として内部向け・外部向けのガイダンスやイベントの企画・運営に従事。社内チームリーダー、社員教育担当の経験もあり人材育成の現場に精通。

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